理事長のあいさつ
鉄道貨物協会
理事長 神立 哲男
会員の皆様並びに関係の皆様におかれましては、平素より当協会の事業活動に格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
日本の貨物鉄道輸送は、明治6年(1873年)9月15日に開始され、今年、150周年を迎えますが、当協会は、昭和25年(1950年)に発足し、「国民生活に不可欠な物資の安定供給」と「地球環境保全」という二つの公益に資するため、貨物鉄道輸送の特性や長所を調査・研究し、広く国民全体にこれらを普及・啓発していく取り組みを推進しております。
最近、我が国では将来の生産年齢人口の減少などにより、物流業界の担い手不足が懸念され、特に2024年問題がクローズアップされる中、「物流の生産性向上」と「効率的な物流」へのニーズが高まってきています。
また、政府の2050年カーボンニュートラルや2030年度の温室効果ガス46%削減目標(2013年度比)の達成に向け、物流分野におけるCO2排出量の削減に更なる取り組みが必要となっております。
貨物鉄道輸送は、営業用トラックと比較してCO2排出量原単位が約1/10(2020年度実績)であるなど高い環境性能を有し、大量輸送機関として労働生産性にも優れ、他輸送モードと連携しながら、モーダルシフトの受け皿としての期待が高まっており、当協会では引き続き、貨物鉄道輸送の利用促進と普及・啓発に取り組んでまいります。
具体的には、調査・研究活動の柱である本部委員会活動において、引き続き荷主企業、利用運送事業者、行政、鉄道事業者からの委員から成る「利用促進委員会」「輸送品質向上委員会」の二つの委員会を運営し、時宜を捉えたテーマの調査研究を進めてまいります。また、全国に設置している18支部では、各地域における貨物鉄道輸送の利用促進や輸送品質向上に関わる身近な課題を検討する場として「利用促進会議」を開催しており、今後とも活発な活動を目指してまいります。
国土交通省制定の環境ラベル「エコレールマーク」の普及拡大については、消費者に対する「物流の見える化」を図るため、認定件数と参加企業をさらに増やせるよう、事務局として取り組みを推進しています。また、将来を担う次世代の子どもたちに環境負荷の小さい貨物鉄道輸送やエコレールマークに対する理解を深め、物流の仕事にも関心を高めていただく機会として、「出張型教室」の開催にも力を入れていますが、その実施地域・頻度は年々拡大し、学校行事の一つとして毎年開催いただくなど、リピート要請を受けるまでになっております。さらに、開催にあたっては、各地域の産業や貨物駅の情報だけでなく、現在、多くの教育現場が授業に取り入れている「SDGs」との関係にも触れるなど、回を重ねるごとに新たな内容を加えるなどの工夫を凝らしており、今後も、各校からの要望を踏まえ内容の充実を図るとともに、新規実施校の拡大にも精力的に取り組んでまいります。
さらに、近年、激甚化する気象災害により、貨物鉄道輸送のネットワークが長期間寸断されるケースが増加している状況を踏まえ、大規模自然災害による被害を未然に防止するための鉄道及び周辺インフラの整備・強靭化等の支援を政府等関係機関に働きかけるなど、国民財産ともいえる貨物鉄道輸送が更に活かされるよう努めてまいる所存です。
上記の活動状況は、毎年取りまとめている「本部委員会報告書」や貨物鉄道輸送に関する情報を発信する媒体として毎月発行している会誌「MONTHLYかもつ」などを通じて、タイムリーに情報提供を行っております。また、貨物列車の運転時刻をはじめ、当協会の公益法人としての活動や貨物鉄道輸送の実態をいろいろな角度から紹介し、貨物鉄道輸送を広く国民の皆様に知っていただくための広報媒体としての貨物時刻表を発行しております。
当協会は今後もさまざまな活動を積極的に推進してまいりますので、なお一層のご支援・ご指導を賜りますようお願い申し上げます。
公益社団法人鉄道貨物協会
理事長 神立 哲男